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2015年11月

徒然漫画語り・其の百五・よしながふみ『ジェラールとジャック』

割と多趣味なほうだと思うし、それもいちいち言葉に関わる趣味にせよ、何かの折に口をつくのは悉く漫画の台詞なので、私はとことん漫画の人なのだなぁと強く思うのです。


  それでいいのだ
  幸福だった日は確かにあったのだから
  お前も元気で



その時々の気分で同じ作品からどの部分をチョイスするかはもちろん変わってくるわけで、でも『ジェラールとジャック』のこの台詞は人生内で使用頻度が高めな気がする…。

人生は変化の連続だ。でも、素晴らしい季節を経験すると、そんな自明のことでさえ理不尽に感じてしまうんだろう。変わってしまった相手を(その場合はおそらく自分も変わっている。或いは相手の本当の姿を見ていなかったのかもしれない)、受け入れ赦し、各々生きるべき道を歩まねばならない。や、これは今の私のアレであって『ジェラールとジャック』の感想としてはなんか違うんだけど、まぁいっか……。

でも、愚かな情熱を重ねて愛し傷付け合った人々の物語という意味では、許容して頂きたく…。どんなにその結果が惨めなものであったとしても、誰を彼を愛したその想いは美しい心の歴史として、大切にしていって欲しいよ。ああああまた今の私のアレ……。何よりも私がそうでありたいと、改めて思ったのです。幸せな人生の一瞬を演出してくれたのは、間違いなく自分が愛したその人だった事実は揺るがないのだ。

それでいいではないか。
幸せだった日の手触りは、まだここにあるもの。

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徒然漫画語り・其の百四―沙村広明『春風のスネグラチカ』

1933年、ロシア。
自らの意思で動かすことの叶わない車椅子に押し込められた美貌の令嬢ビエールカと、その特異にして華麗な車椅子を献身的に押し続ける隻眼の従者シシェノーク。彼らは多大な犠牲を払いつつ、湖畔の屋敷へと棲みつく。未だ革命前夜の時代に隠されたであろう或る証を探すために――。


あー…やっぱ漫画っていいな! 大好き!! って思いました!
私が購入した版には沙村さんのインタビュー記事(初出『マンガ・エロティクス・エフ vol.81』)を紹介する小冊子が挟まっていたのですが、これもすごーく興味深かったです。そこでご自身で語られてもいることにつながるのですが、沙村さんの描く少女には独特の痛々しさが合って素敵。そして、移り変わる季節の空気感。僅かな夏の青い空と、長く過酷な冬の色の無い空。カバーのイラストはその象徴。地にアクリルで古ぼけた白を下塗りした上に水彩で着色してるこういう感じを見せつけられちゃうの、アナログ技法のカラーイラストの醍醐味だなぁって思います。

主役2人もだけど、ヴィクトルとバレンチナも好き。ヴィクトルとか悪役からの大逆転で(や、最初やってることアレなんだども、だからこそ)ずるいなぁって思いました! バレンチナちょー可愛い!!

他にも物語の各所を通り過ぎるように、でもしっかりと彩るキャラクター達(多くが実在の人物)がとっても魅力的。みんな、その眼ひとつで人柄を語ってくる。にしてもラスプーチンってすげぇなあって、さっき改めて調べ直して思いましたね! あらゆるフィクションで描かれた姿よりも何倍も実際の写真の方がヤバいって最高にイカレてるわ…。

そんでもって池田理代子さんの『オルフェウスの窓』を読み直したくなりました。ロシア編は、ただでさえ辛い物語の中でも果てしなく長く苦しい時代だったから、長らくマトモに読み返していないのよね…。

『春風のスネグラチカ』は舞台設定とキャラクターの負った宿命の過酷さに反して、とっても軽やかで読み易い…という私見(単に私が慣れているだけ説アリ…)。平成26年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞作。“とある名家にまつわる、喪失と奪還の物語”って素敵なコピー。

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