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2014年6月

徒然漫画語り・其の九十六―佐藤史生『緑柱庭園』

ならびなき帝国モルディガールの女帝シルドゥーン。
女帝を守り死した近衛隊長ジュマルの息子カイルロッド。
カイルロッドと兄妹の如く育った女帝の愛娘シルドラ。

愛と憎しみは共にある。
深い愛が呼ぶのは、救い難き憎悪。

「愛している」と呼ぶ声に。

喚起されるのは肉を裂く刃。


…佐藤史生さんという作家さんを初めて知りました。何故、今まで巡り合わなかったのか。名前も知らなかった、失礼且つ不思議。でもおそらく、今が読むべき時だったんだろうなぁと思います。

物語は筋が通っていないとならないんだろうけれども、実際は単純に説明できるはずもない世界であるからにして。不条理と悲しみに満ちた物語は謎を問いかけたまま私の心を離さないのです。

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徒然漫画語り其の九十五―石川雅之『もやしもん』

終わってみれば。

お酒のことも菌のことも知識としては殆ど習得できなかった私ですが。

ただただお話としてめちゃめちゃ面白かったし、どっちかってゆうとアメリカ編ではアメリカに対する新たな見方みたいなものを垣間見せて頂いてものすごく興味深かったというか、そうゆう時にやっぱり私はやっぱり歴史の人なのだなぁと思うです。

オリゼーを筆頭にわちゃわちゃする菌たちはやっぱり可愛くてだな。昔、カビパンストラップとかガチャガチャで取ってもらったよ。友達に☆ だから、最終巻で沢木が見せてくれた奇跡は純粋にぐっときました。「杜氏ー」「けいぞうー」…可愛い!! この光を魅せてくれるのがやっぱり物語のたまらない醍醐味なんだなぁと思ったのー。ああもう可愛い! 素敵!!

あと、登場人物みんながきちんと成長したのもたまらんかったですね! ムトーはかなり怪しいけどね! 及川ちゃんの成長っぷりにはスコンと明るいのにもかかわらず泣ける勢い。あと、私は特に長谷川さんが好きだったので、まさかマジであの2人が進展するとか思ってなくて、ドッキドキですわよね!! そこ! マジそこありがとう!! って思った\(^o^)/

物語は、こうやって締めくくられなきゃなのだなぁって、久しぶりに思いました。
『もやしもん』でこんな感想書く人もあんまいないと思うんだが(笑)。
ハッピーエンドは正義だ。

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徒然漫画語り・其の九十四―川原泉『Intolerance -暮林助教授の逆説-』

「たまにはシリアスな漫画を描いてもバチは当たらんだろう。でも当たったらやだな」。そだね、やだね…。

というわけで、川原さんの手によるシリアスな(?)サスペンスドラマ。人里離れた避暑地の別荘で起こる、夏の日の悲劇。

…と言っても、あくまでも川原泉であるがゆえに、ユーモアたっぷり緊張感少な目に。ふわふわふわとも物語はしているのだけれど。川原さんの稀有なところってゆうのは、膨大な知識を披露しているにもかかわらず、それが全然うっとうしくない。場合によっては知識の押しつけみたいになりかねない博学さを、くすっという笑いと共に頭に入れてくれるから、知識欲がものすごい満たされますし。本作はそれに加えて、著者が目指した“シリアス”についても同じようにくすっとした笑いと共に届けて下さってるんだなぁと感じるのです。こういう描き方ができるって本当にすごいなぁと思うのです。

最後に川原さんは「辞書を片手に出した結論は、シリアスとは何だか訳のわからないもの、ちゅーことだった」と仰っています。うーむ確かに、シリアスとは何であろーか。この漫画はシリアスなのだろーか。それは川原さんご自身がジャッジしなかった故に判らぬところではありますが、この物語が悲しい人間を描いているのは明白なのであります。大事なのは、きっとそこ。

  誰も知らない 誰にも言わない
  故に 誰もあの人を裁くことはない

撃たれたのは、白い鳥と赤い鳥。

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徒然漫画語り・其の九十三―有吉京子『ニジンスキー寓話』

名作『SWAN-白鳥-』でバレエ芸術の精神性の昇華を描き切った有吉京子が、その内面世界の更なる深みへと歩を進めた圧倒的作品。人間にとっての芸術、芸術にとっての人間。そのために人は何を捧げ、失い、そして果たして得るものは存在するのだろうか。

振付家と舞踏家として出逢った2人の男。表現者として惹かれ合い、人間として惹かれ合い、そして恋人として惹かれ合う。しかしそれらの激情はやがて、救いようのない妬みと憎しみへ姿を変えていく。成功した男と、舞台から消えた男。その想いを各々の方法で抹殺しようとした幾許かの歳月の後に再び巡り合ったとき、彼らは芸術の果てしない高みを見出す。かつてそこに死の淵よりも深い絶望を見ながらも。

バレエ、という肉体の芸術を題材に、表現の業に憑りつかれた人間たちの悲劇を暴き切ったこの作品を初めて読んだのは15歳くらいの時で、それはもう何が面白いのかさっぱりわからなかったものですが…。その数年後に気まぐれに読み直したとき、あまりの物語の衝撃に泣けて泣けて仕方なかったものです。ダンサーの少年が振付家の男に対して語る、古い夢。「その昔、女は恋人である男を戦場に送り出すのが嫌さに、その前日に男の盃に毒を盛るんだ。それ、僕たちの前世なんだよ。男があんたで、女が僕で、…さ」。このくだりにはぞっとしたなぁ…。あまりにも核心であったのだよなぁ…。

そして、必然として忍び寄る死の足音。光と共に、風と共に、大気と共に。すべてあらゆる祝福を得て、翼は彼をさらっていく。ワルキューレ、メフィスト・ヴァレス。

芸術とは何か。漫画という表現に拠って描かれたその普遍のテーマは、漫画を芸術に昇華させたのだと思うのです。有吉京子、『ニジンスキー寓話』。

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