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2014年2月

徒然漫画語り・其の九十二―美内すずえ『13月の悲劇』

タイトルの美しさに関しては、美内すずえさんがすんごいです。不動の代表作『ガラスの仮面』にしたってそうだけど、とりあえず「うっひょー!」ってくらいに綺麗な言葉の並びで出してくるのですよね。“脆くて壊れやすいガラスの仮面…”ってな。ちゃんと月影先生か誰だかが言ってたものだけれど(うろ覚え…)。

この『13月の悲劇』とかも、ストーリーとしては昔懐かしのホラーミステリーなんだけど。てゆーか、美内すずえさんって基本的に荒唐無稽で泥臭い作画だと思っていて。そしてそれがたまらない魅力なんだけれど。それにこのタイトルを冠しちゃうのグッとくるのです。

以前にここで紹介した『白ゆりの騎士』ですとか『ジュリエッタの嵐』ですとか。それはもう高潔で何かすごいですよね、『王女アレキサンドラ』。単にヒロインの名前がアレキサンドラってだけなんだけど。そのチョイスだよね、きりっと締まるよね! その他にもいちいちすごいのが美内さんの題名マジック。『黒百合の系図』『人形の墓』『アマランスの女王』…(一方で『ダイナマイト☆みるく☆パイ』なんて作品もあります。あと、『みどりの仮面』ってゆう初期短編があるのは面白い!)。

題名マジックって確かにあるんだなぁ。『13月の悲劇』、これまさしく。

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徒然漫画語り・其の九十一―売野機子『薔薇だって書けるよ』

ワタクシめ自身が少女漫画誌に投稿を繰り返しては落選していた不毛なあの時代、よく評価シートに書かれた(ないしはチェックが入っていた)ものです。“もっと読みたくなるようなタイトルをつけましょう”、と。

「なにそれ!? そんなだよ!?」と心中で叫びつつ、しかして受賞者さんたちの作品のタイトルを眺めつつ、「どれ? どれなんだ!?」と考えあぐねていた私が。そんな私がこの歳になって絶叫するほどそれに当てはまるタイトルの漫画に出会えました…。

“薔薇だって書けるよ”。

こーれーなー!!!
「ああぁぁぁ、こうゆうことかぁ…」と。タイトルにドキッとして手にとって、読んで意図が分かって。いやぁ、見事。見事でございます。お話とか作画とかももちろん見事なんだけど、もうこのタイトルを掲げた時点で圧倒的な勝利をしているんだよね、この漫画は。すごいです。

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徒然漫画語り・その九十―及川七生『宵闇初戀奇譚』

こちらも雑誌「メロディ」で10年以上前にデビューされた作家さん、そのデビュー作。この方はその後『月夜烏草紙』というシリーズを持たれて、その単行本を全6巻刊行、本作はその2巻に併録されておりました。が、まぁその単行本も随分と前に廃版になっているはずなのでなんともはやなんですが…。

このお話に、鈴香ちゃんってゆう、まぁ物の怪なんですけど、女の子が出てくるのですが。この子が…この子が……この子の容姿が美しすぎてどうしましょう!? 私の中で少女漫画で出逢った女の子では、池田理代子さんの『オルフェウスの窓』のアルラウネさんか、この鈴香ちゃんかの勢いでとんでもねー美貌です!! この後、及川さんの絵柄がちょっとだけ変化したのに伴いまして、ここまで奇跡的に美しい女の子(※私好み)は、他の作品でも2度とお目にかかることはありませんでした…。

繊細な線で描かれる、おどろおどろしくも蠱惑的な妖怪との邂逅劇。業を負った新進気鋭の絵師と、絶世の美貌の少女と、彼女を取り巻く妖怪と、そこに事件の臭いを嗅ぎつけた新聞記者。明治末期を舞台に描かれた、美しい闇。

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徒然漫画語り・其の八十九―武壱史穂『クロニック・ゲーム』

誰もが見紛う双子の兄弟。あの日の不運な事故で死んだのは、いったいどちらの方だったのか――…。生き残った彼はほのめかすのだ、「僕はいったいどちらだと思う?」。

引き続き、往時の新人作家さんの不世出の名作を。この漫画も、実家に切り抜きがあります。「メロディ」からデビューされた方だけれど、この作品の掲載誌は「LaLa×メロディ」という、1回こっきりの複合誌でした。これも悪くない試みだったと思うんですけど、続かなかったですね。そして、こうした才覚が世に知られることなく埋もれていってしまったのは、本当に惜しい。惜しいと思う!! だから超今更でも書き起こす! ひとつの記憶として。

武壱史穂さんはデビュー作を雑誌で読んでいて。それもすっごい印象的で大好きなお話だったのだけれど。『夢の栖』ってゆう…しかし残念ながら、それこそ私の手元にすらないのよ…。あれは2001年とかの雑誌掲載だったと思います。ああ、読みたいなぁ…(T_T) 透明感のある絵柄と、瑞々しい物語。武壱さんは本当に、水彩画のような優しいタッチで描かれてた。

私がびっくりしたのは『てのひらの宇宙』というお話で、主人公の女の子が最後に自分の将来に対して出した結論が「私は…まぁいいや」だったとき!! あのときはうおおおぉぉぉすげええぇぇぇって思いました! まぁいいやっつって満面の笑みですからね! なかなかそんなふわっとした結末描けないよね! そうゆうこと、なんでもなくやってのけてた。ものすごく印象的。

そんな方だから、闇が立ちこめる今回の表題作も、見上げた空は澄んだ青空だったのです。

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徒然漫画語り・其の八十八―山代遠波『王様の紫』

不世出シリーズ第1弾。

すごく、すごく好きなお話です。

雑誌掲載LaLaDX2006年3月号。掲載されてそれっきりのため、今読もうとするのはほぼ不可能です。私は実家に雑誌の切り抜きを保存してあるのですが、そーゆう形じゃないと残っていないはず…。

でもね! でもね、すごく大好きな漫画なんです! すっごく大好きなので、8年も経った今も覚えていて、そんでもってこうしてここに書き認めようという訳ですよ! うん…山代さんも守れなかった才能であります。今はもう、少なくともこの名義での活動はされてないですよね。

舞台はとある小さな王国(中華寄りだけど、もっと素朴。My 勝手なイメージ⇒ネパール風味)。ヒロインは、王室付きの染物師の一族の少女。彼女が恋をするのはもちろん、その国の王子様なわけで。そしてそれは、身分違いな恋のわけで…。

この作品ではヒロインのいじいちゃんがまさにそれなんだけど、山代さんは職人気質! な物語とキャラクターをしっかり描くのが得意な方。叶わぬ恋と、愛する人のための仕事。揺れる心を心の内に抱えたまま、それでも少女は、いつの日か彼が王位に即位するために、王族にしか着用を許されない高貴なる紫の染めを極めていくことを誓う。例えその日その時、彼の隣に立っているのが自分では無いと知りながらも――。

「叶わぬ恋」って好きだよねー私ねー!! この話が好き過ぎて、ワタクシ、自分でちょっとテイストの似た話を描いたことが後年ありまして。やっぱ女の子のが身分が下で、そこでは完全に彼女が彼のもとを去るところまで描いちゃったんだけど。いやあああぁぁ懐かしいぃぃ!!

読んで頂ければ本当に良いのだけれど、それが叶わないので。ただこうやって、未だに忘れえない新人作家さんの珠玉の短編ってしっかりあります。大切に連れて行きたい。

強さと切なさに貫かれた、誇り高い物語。

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