徒然漫画語り・其の六十一―池田理代子『オルフェウスの窓』
とても久々に漫画のことを書くような気がしてなりません。気のせいじゃありません。でもそういうスイッチが入ったのでまたつらつら書いてみようかと思います。原点は、ド少女漫画なんですよ~、ワタクシ。
この物語を読んだのは中学生くらいの時だったかしら…。『ベルサイユのばら』の池田理代子女史が再び〝男装の麗人〟をヒロインに据えた壮大な歴史譚。ベルばらはフランス革命ですが、この話は20世紀初頭のドイツから始まってやがてロシア革命の渦の中へと突入していきます。
なんだろう、池田さんがベルばらを描いた時にまだ大学生とかでいらっしゃったと記憶してるんですけれど、だから『ベルサイユのばら』ってとても若くて素直な作品だと思うんですよね、登場人物も物語もとてもストレート。今読むと本当に赤面するほど素直じゃないですか!? あれがあの漫画の最大の魅力だと思うんですけど! 机バシバシ叩きたくなるようなね!!
それに反して『オルフェウスの窓』はとても熟成されて、全く違う魅力を放っています。とゆうかね、この話ね、女性の描き方が本当に素敵で惹きつけられるんですよね…、タイプが違うそれぞれに魅力的な女性が次々と現れて時代の荒波を生きていくんですよね…。ヒロインのユリウスは物語中盤でなんやかんやあってなんやかんやなんですけど(曖昧!)。
私ねぇ、腹違いのお姉様のマリア・バルバラさんがね! それはもうマリア・バルバラ姉様が大好きなんですよね! 破れた恋や傾いた家や問題の多い弟妹を抱えながら(そして彼らが消えてしまうのを見送りながら)、独り身で静かにしかし情熱的に立ち続ける、あのお姿がね…。多くの物語には主人公とは別に一連の全てをただ静かに見守らざるを得ない立場のキャラクターがいると思うのです。悲しみと寂しさを抱え込みながらも、自分の意思で守る事を選択して凛と佇む彼女のような人物にとても惹かれるのです。
あとはもう挙げれば際限も無く。少女漫画の悲劇のセオリーをその身に背負った可憐なフレデリーケ。悲しみのドン詰まりを前向きに生きようとしたゲルトルート(彼女に優しくするバルバラ姉様がまた素敵なんです)。叶わぬ恋を崇高な職務へと昇華させた高貴なるカテリーナ。絵に描いたような天性の悪女アネロッテ。愚かで無教養な女の一生を体現せざるを得なかったロベルタ。恋に狂ったシューラも凄かったし、あまりにも貴族的でありながら革命家との恋に身をやつしたアントニーナも悪女的魅力に溢れている。あとアマーリエとかガリーナとか、あぁクララちゃんetc…。
バルバラ姉さまと双璧をなして素敵だったのは、同系統だけどヴェーラさんだなぁ…。私は本当にこうゆう女性キャラクターが好きなんだと実感…。ロシア革命の嵐の中で名門貴族の令嬢として自らが滅びゆく存在だと思い知りながら、叶わぬ恋に泣きながら、守るべきもののために祖国を去ってゆく。あの御方がまた…好きです!! 「泣くのはいつも女 時代がどんなに変わっても」というあのモノローグは素晴らしすぎる。その一方で兄レオニードのことを「臆病だわ 自分でしたことの結果を命の限り見届けるほどの勇気もないのよ」というモノローグが語るのは、紛れもない女の強さなんです。
あともう1人だけ喋らせて! アルラウネさんのこと! この方も悲しい過去を背負って強くあろうとする女性なんですけれど。この方の容姿。私が読んだ漫画の中でいちばんビジュアルがお美しいです。個人の好みなので、このテの古き良き少女漫画の絵柄が嫌いという方にはそれまでかもしれませんが、アルラウネさん初登場時の時に中学生の私は息を呑みました。「うわキレイ!」と叫んだような気もしないでもありません。壮絶なまでに美人です。ユリウスが想いを寄せるクラウス(アレクセイ)の傍らの謎の女性として登場するのでさもありなんです。
というわけで、主人公やあらすじを完全に無視して素敵な女性陣のことばっかり語れて私は幸せです。男性陣で誰が好きかと問われると確かにクラウスはカッコ良いですね、イザークはダメ男にもほどがあると思いますがモテモテなのはそのダメさからでしょうね、まったく! レオニードも素敵でしたが、でも断然ダーヴィトですね!! 最後のあの展開はニヤニヤしましたね!!
それはもう、微かな救いを拾って行かないととても辛い物語でもあるんですけど、その諸行無常の儚さが魅力的なんです。背負った業と宿命。非業の死。暗澹たるそれらに埋め尽くされたかのような物語がそれでも美しいのは、そこを生きる人物たちの美しさだと思うのですよね。久々に書いたら長くなりました、やっぱり好きなのね。この漫画が無かったらドイツに旅行しなかったと思います。舞台となった小さな地方都市レーゲンスブルクは未踏のまま、未だに憧れの地であり続けています。
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